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イベントレポート2018

2018年度理事会・総会 開催           2018年6月6日 岡山プラザホテル

 岡山EU協会の2018年度理事会・総会が6月6日(水)、岡山市中区の岡山プラザホテルで開かれ、事業計画や予算などが決まった。
 理事会の後、開催された総会には、会員96人
(委任状を含む)が出席。松田久会長があいさつし、議事に入った。 2017年度の事業報告、収支計算などについて、羽田浩事務局長が1年間の活動状況を説明。3回の「EU講座」開催や、ホームページの充実、会員の増強活動、EUとの友好促進事業などについて振り返った。これを受けて岡﨑彬監事が会計監査報告し、拍手で承認された。 2018年度の事業計画、収支予算についても審議し、事務局側がEU講座を複数回開くことや、特別講座を企画することなどを紹介。2019年の創立10周年をにらんで活動を活性化させていくとアピールし、満場一致で承認された。
 総会後には、ネスレ日本㈱専務執行役員のグンター・スピース氏が「スイスから見たEU」と題して記念講演。EUに加わらず、独自の道を歩むスイスの歴史や社会状況、周辺諸国との関係などを流ちょうな日本語で語り、会員と意見交換した。 スピース氏が加わった懇親会も開催され、会員はEUの将来像などについて話し合った。

第21回EU講座 「仕事は人生の中心じゃない? オランダ流の働き方・暮らし方」

 第21回EU講座が5月21日、岡山市北区のVIA PACEであり、岡山大の国際化を推進するグローバル・ディスカバリー・プログラム担当の前副学長で、同大学院社会文化科学研究科教授(文化人類学)を務める中谷文美(あゆみ)さんの講演「仕事は人生の中心じゃない? オランダ流の働き方・暮らし方」を約40人が聴いた。中谷さんは「ワークとライフは対立するものではなく、大切なのはコンビニエント(組み合わせ)。仕事と家庭の両立を同じ文脈でとらえて」と説き、日本の現状について会員と熱心に意見交換した。
中谷さんは1963年、山口県下関市生まれ。上智大外国語学部フランス語学科卒。京葉教育文化センター(千葉県)に3年間勤務した後、英国に留学しオックスフォード大学大学院博士課程を修了した。岡山大学専任講師、京都大学併任助教授などを経て現職。著書に「オランダ流ワーク・ライフ・バランス―『人生のラッシュアワー』を生き抜く人々の技法」などがある。
「世界が激動していた1980年代を国や経済をベースとしない庶民の視点でとらえたかった」ことが、文化人類学を学ぶために英国留学した動機という中谷さん。インドネシア・バリ島の山中の村で民泊しながら研究した成果を論文にまとめるため「文献が豊富にある旧宗主国のオランダに、同じ研究者の夫、長男とともに長期滞在したことがきっかけでオランダにおけるワーク・ライフ・バランスが研究テーマの一つになった」と振り返る。
仕事、家庭、地域のバランスについての日本との比較では「家庭優先を希望する人が多い日本の30代男性も現実は仕事優先になっているが、オランダは希望する労働時間と実際の差がない」と指摘。1日8時間・週36時間労働が基本になっているオランダは「だれも残業する人がいないから、1日1時間残業して『9時間×4日=36時間』にすれば土・日以外に週休を1日増やすという理屈が現実として成り立つ」と紹介した。
1960年代後半から働く女性の割合が増え、現在は20~49歳代で80%を超えていることについて、同一職種・同一労働という原則の下、パートタイム労働とフルタイム労働との均等処遇を原則とする労働時間差別禁止法(1996年)、パートとフルを従業員の方が選択できる労働時間調整法(2000年)などの公的制度が後押し。「主婦として家庭に入った女性がパートで働くようになり、フルからパートや在宅勤務に働き方を転換して働き続ける女性も増えた」と背景を説明した。
現在、議論されている日本の働き方改革について「法案では働き方改革がパッケージになっているが、個々の状況に応じて改革のメッセージが一人一人に届くようになっていないことが問題。結婚~第1子誕生~第2子誕生~子ども就学というライフステージの変化に応じて働き方(場所、時間)を柔軟に変えられるように、個人を支える制度の存在が重要」とし、「生活は多様なパーツの組み合わせから成り立っており、組み合わせのパーツや方法は各人各様に決めるべきもの。ライフステージ、家族の状況、周囲との関わりなどに応じて修整しながら暮らせるワーク・ライフ・バランスを目指さなくては」と講演を締めくくった。

EU協会・岡山経済同友会共催講演会
「アルベルゴ・ディフーゾ フォーラムin 岡山~新しいかたちの分散型ホテル~」

  岡山EU協会(松田久会長)は6月13日(水)岡山市北区駅元町のANAクラウンプラザホテル岡山で講演会「アルベルゴ・ディフーゾ フォーラムin岡山~新しいかたちの分散型ホテル~」を開いた。  これは廃村危機にある古民家や空き家を新しい形の分散型ホテルに呼び起こそうと提唱したイタリアのジャンカルロ・ダッラーラ氏を招いて開いたもので、岡山県矢掛町が国内で初めて認定されたことを受けて行われた。 会場には同協会や岡山経済同友会会員、行政、教育関係者、留学生ら約 150人が参加、松田会長が「矢掛町が初の認定を受けたことはぴったりと思う。イタリアの疲弊した村や過疎・高齢化した村がダッラーラさんの考えを大きな武器として、どのようにして再興していくかをよく勉強し、多くの人たちに広げていきたいと思う」とあいさつした。 またNPO法人「日本で最も美しい村」連合常務理事の長谷川昭憲氏は「本連合は13年前の2005年10月に日本でスタートしたが、世界連合にはフランス、ベルギー、カナダ、イタリア、スペイン、スイスが加盟し、 10月には中国も加わる見通しだ。世界7カ国が加盟して国内63、世界 281町村あるが、日本と同じく美しい村の存続自体が課題だ。私は32年イタリアに住みダッラーラ先生と知り合ったが、矢掛町が認定を受け、岡山がアルベルゴ・ディフーゾの“首都”となって、岡山発信で全国に広がることを期待する」と述べた。 講演に立ったダッラーラ氏は“アルベルゴ・ディフーゾ”の意味について「廃村の危機にあったイタリアの小さな村々に再び息吹を呼び戻そうと伝統集落の再生を目指して 1980年代に提唱した試みであり、今では多くの町で宿泊施設やレストランが再興している。ただ商売や金もうけを目的にするものではなく、オーナー独自の温かいもてなしと現地の人たちとの触れ合い、飾らない日常の共有が魅力になっていることだ」と述べた。 さらに「何も新しいホテルを作るわけではなく、あるもののよさを再認識することに始まり“持続可能なツーリズム”を通した集落再生の取り組みこそが、アルベルゴ・ディフーゾ活動の精神になっている」と強調した。

第22回EU講座兼岡山経済同友会環境・エネルギー委員会 

 岡山EU協会は一般社団法人岡山経済同友会の環境・エネルギー委員会(藤木茂彦委員長)と共催で11月2日(金)、岡山市北区駅元町のANAクラウンプラザホテル岡山「曲水の間」で松田正己、宮長雅人両代表幹事、松田久岡山EU協会会長(前岡山経済同友会代表幹事)はじめ会員ら40人が出席して開き、国立産業技術総合研究所・福島再生可能エネルギー研究所上席イノベーションコーディネーターの近藤道雄氏を講師に「サステナブルな再生可能エネルギー利用―EUの実例を中心に―」と題する講演を聴いた。 福島県郡山市の同研究所へは今年4月に本委員会から17人が訪れ、融雪装置、地熱利用、蓄電技術などを視察、最新の状況について勉強した。 まず岡山EU協会の松田久会長が開会あいさつに立ち「昨日、近藤先生とご一緒に錦海湾の瀬戸内きらり太陽光発電所の現場へ視察に行ってきた。いよいよ10月1日から235メガワットの世界最大級の太陽光発電所が稼働したが、近藤先生は約10年前に牛窓のオリーブ園から眺めて広大な塩田跡に産総研独自の研究所を建てて塩害に対する研究やアドバイスを進められており、岡山とは縁の深い方だ。日本では平置きの太陽光発電所の建設は難しいといわれていたが、100%中国製の発電パネルを使って将来性を含めた電力供給を開発している。今では電力供給が自然の脅威にさらされることも多く、日本がどういう形で太陽光発電を進めていくかを世界的な見地から研究してきており、こうした観点からお話が聴けるものと期待している」と述べた。 近藤氏は「太陽光や風力など再生可能エネルギーに関連した世界の投資額が現在では年間30兆円に達している。国連提唱のSDGs(持続可能な開発目標)の考え方の中でもエネルギー問題が大半の課題に関係しており、環境への配慮や資源の枯渇などの問題を考えると、企業戦略には大きなポイントになる」と指摘、「とくに欧州では、環境、社会、企業に対する“ESG投資”が世界でも突出して多く、石炭火力の減少に対して、再エネへの投資額が大幅に増えてきている」と説明した。 さらに、欧州各国で広まっている“スマートシティ”の街づくりに触れ「世界のエネルギーは70%が都市で消費されており、このうち40%が建物、30%が交通関係だが、都市には“レジリエンス(回復力)向上の道”として、独立型、情報共有型、電力共有型の3つの型がある。このうち電力共有を進めてリスクを分散しているドイツの場合、災害時に全市で停電したときの復旧など、都市機能を維持する上で非常に有効な手段になっている」と述べた。最後に太陽光や風力発電は世界的には堅調に伸びているとした上で、岡山の場合に触れ「日照に恵まれた地域であり、太陽光発電をもっと普及して“スマートな岡山“の実現に努力していただきたい」とこれからの進む方向を示した。

就実グローカル・フォーラム2018 

11月3日(土・祝)岡山EU協会、岡山県中小企業団体中央会、就実大学が共催し、岡山市中区西川原の就実大学で、日本の針路について考える「就実グローカル・フォーラム2018」を開いた。経営者、教職員、学生ら約170人が参加し、世界の現状分析として、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を示す「VUCA」をキーワードに、国内外の有識者が議論を進めた。 松田久・岡山EU協会会長のあいさつの後、英誌エコノミスト元編集長のビル・エモット氏が基調講演。「ビジネス環境は10年前に比べ良くなったが、2011年以降の欧州債務危機で、各国で分断現象が起きた。英国のEU離脱、トランプ大統領の登場、米中の経済対立が欧州に影響するのではと懸念している」とし、移民問題、ポピュリズムの台頭、イタリアの債務高などで新たな分断が起きるのではと見通した。 続いて元在日米国商工会議所会頭のグレン・S・フクシマ氏、元ソニー㈱会長の出井伸之氏らが加わり意見交換。フクシマ氏は「下積み経験がないトランプ大統領の誕生で、世界の不確実性が増した。だが米国は非白人が増え、開かれた方向に向かっている。中長期的には良い方向に向かうだろう」との認識を示した。出井氏は「われわれはパラダイムチェンジのただ中にいる。1995年のインターネット開放が大きかった。EU、米国、中国でデータの主権を巡る争いが起きている。ビジネスの中心は大西洋から太平洋に移っており、日本の未来は決して悪くない」と分析した。 その後の自由討議では、世界政治の混迷、米国での関税問題、移民問題と国民の反発、情報プラットフォーマーの寡占などを巡って白熱。国内外の有識者が示す奥深い議論に、詰めかけた参加者が聞き入った。

第23回EU講座「チーズの魅力」

 第23回EU講座は2月25日(月)、岡山市北区駅元町のANAクラウンプラザホテル岡山で開かれ、チーズづくりで世界的にも著名な吉田牧場の吉田全作社長による「チーズの魅力」について、会員ら50人が講演を聴いた。 吉田氏は岡山朝日高校を卒業後、北海道大学農学部畜産学科を経て農協関連団体に勤務された際、雑誌「暮らしの手帳」で、フランス・ノルマンディ地方でチーズづくりをする老夫婦の紹介記事に触れてチーズに興味を抱き、1984年に岡山県吉備中央町に吉田牧場を創業した。当時イタリア・チーズの普及に努めていた同国参事官のサルバトーレ・ビンナさんと出会い、モッツァレラ・チーズの製造指導を受けて良質なチーズの製造に成功。有名なイタリア料理シェフの落合務さんに認められて吉田牧場のチーズが一気にブレーク、現在世界でも人気を博し、吉田牧場を知らない人はいないといわれるほどになった。 あいさつに立った岡山EU協会の松田久会長(両備ホールディングス代表取締役社長)は「今日はEU好きで、中でもチーズ好みの方に集まっていただいたものと思っております。ご本人も自分はEUとは関係がないように言われていますが、“EUの香りはチーズの香り”といわれるように、チーズとEUは切り離せないものと思っています。チーズ好きの皆様も興味を抱いてお話を聞いて下さい」と述べた。 続いて吉田氏が講演に立ち、「EUのチーズづくりの歴史は浅く、産業革命の後に増え始めて、今では“村が変われば名前も変わる”といわれるほどチーズの種類は多いのですが、基本的なつくり方は5つくらいしかありません。世界で最も古くからチーズのつくり方が多いのはモンゴルで、紀元前1万年くらい前からチーズがあります。そのころはほとんどアジアが中心で、中近東やネパール、ブータン、チベットなどが多く、そこから広がって世界各地で生産されるようになりました。それぞれ各国の特徴をもったチーズができるようになった所以です。ここで申し上げたいことは、チーズづくりは、初めは“暮らしの技”として受け継ぎ、家庭生活の中で味噌や醤油と同じようにつくられたもので、もともと産業として存在したものではないということです」と発生の由来を説明した。 続いて日本の酪農の歴史や、世界各地のチーズづくりの特徴や利用状況などについて、国の歴史とともに各地の写真を使いながら紹介した。 最後に「世界中には、ものづくりの中に暮らしがあふれていて、思想・歴史を創ってきたものだということを、身を持って感じました。日本にも田舎へ行くと、今でもモノづくりの中に残っていると思いますが、産業化が進む中でそれがどんどんなくなってきている。日本の農業も専業農家が減り危うくなってきている。しかし自分たちの暮らしの中の思想を守るために“ものづくり”をしていると貫き通して、チーズづくりをしております」と締めくくった。