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イベントレポート2017

第20回EU講座
10年後の街を実験する―ヨーロッパの事例から考察する、都市とアートの可能性

第20回 EU 講座が1月16日(火)、岡山市北区のイタリアンレストランであり、会員ら約30人がアーティスト中澤大輔氏=東京在住=による「10年後の街を実験する―ヨーロッパの事例から考察する、都市とアートの可能性」と題した講演を聴き、その後も熱心な質疑応答があった。
講座では冒頭、松田久会長が、中澤さんの肩書にアーティスト、デザイナーに加え『エクスプローラー』(explorer)とあったが、街を歩きながら何かを探す“探検家” ということだろうか。20回目の節目にふさわしい講師に来岡いただいた」と挨拶。中澤氏は、東京の渋谷駅構内でヘッドホンをつけて歩くと駅で働く人たちの物語が聞こえる自らの体験型作品「Passage Tells: Shibuya」 や2014年から高松市仏生山町で継続的に開催している住民参加型の演劇まちあるき「パラダイス仏生山」について、「場所・人・モノの背後にある物語に耳を傾けることで、都会でも地方でも、人は優しい気持ちになれるのでは」と作品意図を説明した。
 続いて、昨夏に開催された世界的な3つの国際芸術祭①ヴェネツィアビエンナーレ(伊ヴェネツィア;1895年初開催・2年に1度)②ドクメンタ(独カッセル;1955年・5年に1度)③ミュンスター彫刻プロジェクト(独ミュンスター;1977年・10年に1度)について、現地で撮影した写真を映写しながら歴史や特徴、中心的ディレクター、功罪などを説いた。
 瀬戸内国際芸術祭(2010年・3年に1度)、岡山芸術交流(2016年・3年に1度)について「アートは時代という文脈や場所、鑑賞者の解釈から逃れることはできない。現代はヨーロッパなら移民、日本なら人口減少という問題があり、これからの地域の在り方を巡る議論があって初めて、アートが岡山に何かをもたらす力になる」と締めくくった。

第19回EU講座 「16世紀から21世紀へ 『ヴェニスの商人』が伝えるもの」

第19回EU講座が10月20日、岡山市中区の岡山プラザホテルで開かれ、会員ら約20人が岡山商科大の松浦芙佐子准教授による「16世紀から21世紀へ  『ヴェニスの商人』が伝えるもの」と題した講演に耳を傾けた。  松田久会長が「シェイクスピアの中でもテーマは『ヴェニスの商人』ということで、興味深い話を楽しみにしている」とあいさつし、イギリスの劇作家シェイクスピアの言語を基にした英語学を研究する松浦氏の経歴を披露。講演に移り、松浦氏は昨年、没後400年を迎えたシェイクスピアについて、イギリスではビジネスやファッションなど多様な場面に劇中のシーンや衣装、言葉が使われており「作品が生活の中に深く溶け込んでいる」ことを紹介した。 続いて、ヴェニスの商人が執筆された16世紀末のイギリスについて「人口急増による躍進」「国際交易の後進国としての劣等感」といった時代背景を踏まえながら、ルネッサンス期のイタリアを舞台にした作品では「国際交易の広がり、商業で利得をあげることをよしとする新たな経済システムへの変化により、封建的な階級制度が崩れ、身分の流動化が進んだ時代を描いている」と指摘。さらに、シェイクスピアが作中で取り上げた「国際交易による世界の拡大」といった当時の社会問題を「宇宙やナノへの広がり」「イスラム国など異文化圏の台頭」などの形で21世紀へ置き換え、「400年前のシェイクスピアの作品との共通点を見ることで、現代の生き方のヒントになる」と締めくくった。

2017年度理事会・総会開催 

岡山EU協会は、6月15日(木)、2017年度理事会・総会を岡山市中区の岡山国際ホテルで開き、任期満了に伴う萩原邦章会長(岡山経済同友会顧問、萩原工業会長)の後任に、松田久氏(同同友会代表幹事、両備ホールディングス社長)を選んだ。任期は2年。萩原氏は筆頭理事に就任した。
 まず理事会で、役員改選を行い、新会長を選任。続いて開いた総会では、会員約40人が出席し、一部の副会長、理事の交代を承認した。また、16年度の事業報告と収支計算書を承認。17年度事業計画として、会員あるいは外部識者を講師に招いて欧州の経済・文化を学ぶ「EU講座」を複数回開催▽会報「EU Letter」の継続発行▽ホームページの充実▽会員増強▽EUとの友好促進事業―に取り組むことと、同年度収支予算を決めた。
 記念講演に移り、南山大学前学長のミカエル・カルマノ氏(ドイツ出身)が「日本文化との出会い~一人のドイツ人の経験」と題して講演。懇親会も開き、バイオリン演奏を聴きながら歓談した。

第18回EU講座 「労働者の理想郷クレスピダッタ(イタリア)と倉敷」

 第18回EU講座が5月26日(金)、倉敷市の吉井旅館で開かれた。玉島信用金庫の宅和博彦常勤理事が「労働者の理想郷クレスピダッダと倉敷」と題し、産業革命期に綿織物の製造で栄え、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されているイタリアの企業村・クレスピダッダを紹介し、同じく繊維産業で栄えた倉敷との共通点を解説。会員ら約25人が聞いた。
 クレスピダッダはミラノの北東約35㌔にあり、クリストフォロとシルビオのクレスピ家親子二代が自身の綿織物工場で働く人たちのために整備、統治した。1878年、アッダ川のほとりの所有地を切り開いて工場を建設。動力源として当時としては珍しい水力発電所を設けて品質、生産効率ともに向上させ、欧州全域に顧客を広げた。労働災害防止マニュアルを策定し、菜園付き一戸建て住宅や診療所、学校、劇場を整備するなど福利厚生も充実させた。しかし、世界恐慌のあおりで経営が悪化。ムッソリーニの画策もあって工場を明け渡した。工場は閉鎖されたが、村には現在も当時の工員の子孫が住んでいるという。世界遺産には1995年に登録された。
 宅和氏はこうした歴史を振り返り、倉敷の大原家との共通点に関し、ともに綿紡績で発展し、医療機関を整備したり、労働者の安全確保や救貧事業、絵画収集などを手掛けたりした、と説明。その上で「シルビオも大原孫三郎も企業家による救貧事業や労働環境の改善には限界があると感じ、シルビオは国政に働きかけようとした一方、孫三郎は学術的な研究を行い、問題の根本的解決を図ろうとした」と締めくくった。
 聴講した大原美術館の大原あかね理事長も、「(孫三郎が紡績業に着手した当時)既に倉敷がまちだったことがクレスピダッダとの大きな違い。倉敷はまちがしっかりしていたので、つくったものが今も残り、いろいろな人が関わっている。クレスピダッダは村が完結していたため、存続させるのは難しかった」などと述べた。
 この後、懇親会もあり、ワイン輸入販売・フジトレーディング(倉敷市)の森田富士子代表がセレクトしたポルトガル産ワインと、同旅館の料理人が手掛けたイタリアンに舌鼓を打ち、ロシア出身のダンスインストラクター・ナタリヤさん=岡山市在住=らによるベリーダンスを楽しんだ。