第8回岡山EU講座が4月14日(土)、岡山市北区の県立図書館で開かれ、近現代美術修復の国内第一人者として知られる大原秀之吉備国際大学文化財学部教授が「ヨーロッパ近現代美術を見る眼―保存修復の視点から」と題して講演しました。大原教授は「私は絵画のお医者さんです」と会員20人を前に自己紹介。プロジェクターを使いながら児島虎次郎、福澤一郎などの痛んだ絵画を石こうや水彩絵の具を使って補彩する仕方などを解説した。また、1975年、20歳代でドイツに渡りデュッセルドルフ市立美術館で美術品の保存修復技術を身に付けた経験談を披露。加えて、所蔵するルーベンスの油絵に何者かが濃硫酸をかけた事件に遭遇、その修復作業に携わったこと、またオランダ、アムステルダムの国立美術館でレンブラントの絵が不審者にナイフで切りつけられたとき、急いで駆け付けると同美術館では一角にガラス張りの部屋を作り、修復作業をすべて公開していたことを紹介。大原教授は「欧州では先人から受け継いだ美術品を大切にする文化が浸透していることがよく分かった。日本にもこうした文化を根付かせたい」などと語った。
岡山EU協会(会長・中島基善岡山経済同友会顧問)は6月15日(金)、岡山市中区の岡山国際ホテルで2012年度理事会・総会を開き、2012年度事業計画、同予算などを決めた。理事会に続いて開かれた総会には会員96人(委任状含む)が出席、中島会長が「財政危機に陥っているギリシャの再選挙が明後日に迫っている。
また、スペインの高い失業率も懸念されている。課題も含め欧州に注目していきたい」とあいさつ。
まず、11年度事業・決算報告を原案通り全員の拍手で承認。12年度事業計画として欧州経済・文化の勉強強化のため「EU講座」を充実させる、会報「EU Letter」の継続発行、ホームページの充実、「EUが学校になってくる」の受け入れ支援―などに取り組むこと、これら事業の実施のため総額319万円余の収支予算を原案通り決めた。記念講演では早稲田大学政治経済学術院の福田耕治教授が「EUガバナンスと欧州債務危機の行方―ユーロとEUの今後について」と題して講演、ギリシャ連立与党が過半数を取れなかった場合、EUは大混乱に陥ると解説した。 この後、懇親会を開き、楽しいひと時を過ごした。
駐日欧州連合(EU)代表部のPR用バスが6月1日(金)、岡山市北区津島京町の岡山商科大学を初めて訪問した。EUへの理解を深めてもらうキャンペーンの一環だが、欧州財務危機や通貨ユーロ安が続いていたことから学生たちの関心を買った。EUバスは5月14日から6月10日まで、東北から九州地方まで巡回することが企画され、岡山EU協会(会長・中島基善岡山経済同友会顧問)管内では、岡山商科大学が受け入れを決めた。この日、同大キャンパスではEU関係の資料・記念品などが学生たちに配られ、ルディ・フィロン広報部長が講演、「EUはサッカーのチームのようなもの。
一緒に力を合わせたほうがよいと思った国々の集まりである」「石炭と鉄鋼があると武器をつくってしまう。そうさせないよう共同管理するため1951年、EUの統合組織の第1号となる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)ができた」などとEUの歴史などを分かりやすく説明した。会場の学生から「欧州債務危機の原因は何か」といった質問があった。
写真:
上: エコバッグなどを配りEUをPRする隊員
下:真剣な表情で講義を聴く岡山商大の学生たち
第9回EU講座が9月20日(木)、岡山市北区のルネスホールで開かれ、公演のため岡山入りしていた日本フラメンコ協会理事で舞踊家の鈴木眞澄さんが「フラメンコ~五感を駆使して喜怒哀楽を表現する」と題して岡山EU協会会員30人に、ギター、歌、踊りを交えながらスペイン発祥のフラメンコの魅力を解説した。 鈴木さんは「東京だけでも100以上のフラメンコ舞踊教室がある。日本はイタリア、フランスを抜き世界第2のフラメンコ人口を誇る」と話し「フラメンコはスペイン南部のアンダルシア地方に生まれた異民族の文化で、歌から始まった。歌のテーマはいろいろで子や親への愛、恋、貧しさなど民衆の生活そのもの」「若い女性が踊る印象が強いが、百人百通り、お年寄りが人生経験を生かして表現力豊かに踊るなど世代を超えて楽しめる。」などと語った。また、アンダルシアの春祭り「セビジャーナス」、生きる喜びを歌った「アレグリアス」などを鈴木さんは歌手、ギター奏者とともに華やかに披露。さらにカスタネットの使い方、複雑な足さばきなどを分かりやすく説明した。
岡山経済同友会との合同講演会が11月29日(木)、岡山市中区のホテルで開かれ、元ユーログループ議長特別顧問のギュンター・グロッシェ氏が「ユーロランドの債務危機からの脱出」と題して講演、約50人が熱心に聴いた。
グロッシュ氏はドイツ人で国際通貨基金(IMF)の理事、ドイツ財務省欧州通貨統合問題担当課長などを務めた後、ユーロ圏各国の財務省による会合ユーログループの議長特別顧問も務めた。岡山での公演は2010年10月に続いて2回目。
この日、グロッシェ氏はEU各国が債務危機を脱するため、財政規律の強化などに取り組んでいる現状を説明した上で「最悪期は脱したとみられるものの、各国とも経済成長に欠けているのが最大の問題だ」などと指摘した。
第10回EU講座が平成24年12月20日(木)、岡山市北区のホテルで開かれ、岡山大学大学院社会文化科学研究科の田口雅弘教授が「欧州の新しい戦略拠点―ポーランドの東から北への道」と題して講演した。 冷戦時代、ソ連の影響下に置かれていたが1989年8月、社会主義国の中では初の非共産党政権を樹立。その動きがチェコ、ハンガリーなどに広がりベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊の引き金を引く形になった。社会主義が崩壊した当時、1000%というハイパー・インフレに陥ったがその後、WTOやOECD加盟を経て2004年5月、EU加盟を果たした。ユーロ導入にはゆっくり時間をかけて準備をしていたことから、今回のユーロ危機の直接的な影響を受けることはなく、その点は幸いだったといえる。 経済はここ数年、平均4~5%と日本から見てもうらやましいような成長率を達成。世界金融危機後の2009年も1.7%で、EU加盟国の中で唯一プラスを維持した。同国からチェコ北部にかけては世界の自動車、家電、液晶関係企業が多数進出し新興市場を形成、生産はしっかりしており、これに為替安が加わり外需が堅調になったことが挙げられる。内需も建設、消費需要が底堅く、プラス成長を支えた。ドイツ経済の影響を強く受け、ポーランド人の意識の中はドイツ経済と一体化しているといってもよい。欧州の対立軸が南北にあることを考えると、かつての東からの支配からいま、北を目指しているといえよう。ただ、ユーロ危機以降、外需は弱まり、内需も減退し2013年はなおプラス成長ではあるが1%台にとどまりそうで、今までのような調子のよい発展は難しいと思える。特に失業率が13%台に上昇してきているのが心配だ。