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イベントレポート2018

第21回EU講座 「仕事は人生の中心じゃない? オランダ流の働き方・暮らし方」

 第21回EU講座が5月21日、岡山市北区のVIA PACEであり、岡山大の国際化を推進するグローバル・ディスカバリー・プログラム担当の前副学長で、同大学院社会文化科学研究科教授(文化人類学)を務める中谷文美(あゆみ)さんの講演「仕事は人生の中心じゃない? オランダ流の働き方・暮らし方」を約40人が聴いた。中谷さんは「ワークとライフは対立するものではなく、大切なのはコンビニエント(組み合わせ)。仕事と家庭の両立を同じ文脈でとらえて」と説き、日本の現状について会員と熱心に意見交換した。
中谷さんは1963年、山口県下関市生まれ。上智大外国語学部フランス語学科卒。京葉教育文化センター(千葉県)に3年間勤務した後、英国に留学しオックスフォード大学大学院博士課程を修了した。岡山大学専任講師、京都大学併任助教授などを経て現職。著書に「オランダ流ワーク・ライフ・バランス―『人生のラッシュアワー』を生き抜く人々の技法」などがある。
「世界が激動していた1980年代を国や経済をベースとしない庶民の視点でとらえたかった」ことが、文化人類学を学ぶために英国留学した動機という中谷さん。インドネシア・バリ島の山中の村で民泊しながら研究した成果を論文にまとめるため「文献が豊富にある旧宗主国のオランダに、同じ研究者の夫、長男とともに長期滞在したことがきっかけでオランダにおけるワーク・ライフ・バランスが研究テーマの一つになった」と振り返る。
仕事、家庭、地域のバランスについての日本との比較では「家庭優先を希望する人が多い日本の30代男性も現実は仕事優先になっているが、オランダは希望する労働時間と実際の差がない」と指摘。1日8時間・週36時間労働が基本になっているオランダは「だれも残業する人がいないから、1日1時間残業して『9時間×4日=36時間』にすれば土・日以外に週休を1日増やすという理屈が現実として成り立つ」と紹介した。
1960年代後半から働く女性の割合が増え、現在は20~49歳代で80%を超えていることについて、同一職種・同一労働という原則の下、パートタイム労働とフルタイム労働との均等処遇を原則とする労働時間差別禁止法(1996年)、パートとフルを従業員の方が選択できる労働時間調整法(2000年)などの公的制度が後押し。「主婦として家庭に入った女性がパートで働くようになり、フルからパートや在宅勤務に働き方を転換して働き続ける女性も増えた」と背景を説明した。
現在、議論されている日本の働き方改革について「法案では働き方改革がパッケージになっているが、個々の状況に応じて改革のメッセージが一人一人に届くようになっていないことが問題。結婚~第1子誕生~第2子誕生~子ども就学というライフステージの変化に応じて働き方(場所、時間)を柔軟に変えられるように、個人を支える制度の存在が重要」とし、「生活は多様なパーツの組み合わせから成り立っており、組み合わせのパーツや方法は各人各様に決めるべきもの。ライフステージ、家族の状況、周囲との関わりなどに応じて修整しながら暮らせるワーク・ライフ・バランスを目指さなくては」と講演を締めくくった。